カーショー

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スイスのキワニアンはクラシックカーとガスポンプに情熱を注いでいます。

文・写真:ケーシー・ジャクソン

マーティン・ジャギはスイスのラウパースドルフにあるエネルギー・パーク・イベント・ミュージアムの中のオフィスの椅子に腰かけ笑みを浮かべています。誰かが彼のオフィスの窓から見える素晴らしい景色について話をしました。長く伸びた芝が広がり、完璧に手入れがされています。しかし、西アルプスの北にそびえるジュラ山脈に向かうにつれて、その姿は消えていきます。言うまでもなく、緑がとても映えています。その景色は雲一つない青い空と対照的です。

「まさに完璧です」と、ジャギは言います。

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パナール・ディナX-86。キワニス会員のマーティン・ジャギが所有するお気に入

しかし、エネルギー・パーク・イベント・ミュージアムを訪れる人達は、ラウパースドルフまでその景色だけを見に来るわけではありません。建物の中にある「モノ」に興味があります。ジャギのオフィスの下のフロアーにある「モノ」です。

「ガスポンプを集めているんです。」と、彼は言います。「たくさん持ってるんです。車も。」

2階のショールームがその大きな建物を占領している様子を見ると、この発言がいかに謙虚な発言かがわかります。この建物はジャギの車博物館、イベント・プランニング、そして広告業という様々なビジネスの本拠地です。ジャギのビジネスは、ツォフィンゲンの近くのキワニアンが毎年行っているジャズ・フェスティバルの計画を立てる時に、力を発揮してくれます。(2017年9月号の「オール・ザット・ジャズ」を参照) ジャギはバンドの交通手段の手助けをし、イベントの広告・宣伝活動を行ってくれます。しかし、もし皆さんがジャギが所有し経営するこの建物に来る時は、大体車関係で足を運んでくるはずです。

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ところで、どうやってジャギはこれだけの「モノ」を手に入れることができたのでしょうか。

「15歳の時、ガスポンプを集め始めました。誰も興味がなかったので自分でしようと思って。」と、彼は笑いながら言います。「アメリカのアールデコのポンプを見ました。とても素晴らしかったんです。それからポンプを収集し始めました。」

ジャギによると、ヨーロッパでは今も昔もガスポンプを収集している人は多くないということです。そして、ジャギのライバルになるようなコレクターも多くはいないとのことです。

「600個以上のガスポンプをもっていますから。」と彼は言います。「世界でも最大級ではないでしょうか。どの時代のガスポンプも持っています。30年代、40年代や50年代のものだけを集めている人はいますが、私はすべての年代のガスポンプを集めています。」

約8年間、ジャギは近くの村で小さな博物館を所有していましたが、彼のコレクションが入りきることができなくなるのは時間の問題でした。

「1人のコレクターから150個のガスポンプを受け取ったことがあります。」と、ジャギ。「80歳を過ぎていて、彼の持っている全てのコレクションを無料でくれました。他の誰もガスポンプに興味がなかったので。」

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これまでに、多くの人がジャギに無料でガスポンプを提供しました。そして、車も無料です。多くの人は、自分達のコレクションをより多くの人に見てもらいたいと思っていると、ジャギは言います。なので、みんな、ジャギのエネルギー・パークに寄付できないか尋ねてきます。無料のアート作品を拒否するのは難しいことです。

「私はコレクターであって、カーディーラーではありません。」と、彼は言います。「去年、修理が施された車を9台、引退者ホームに引っ越される方から譲り受けました。9台ですよ!『所有している車をどうしたらいい?。多くの人に見てもらいたい。』と彼は思ったと話してくれました。」

「それでは、私の車ですが・・・」と、彼は言いながらショールームを周ります。「私が初めに所有していたのは、スチュードベーカーでした。スイスではそんなに一般的ではありません。このメーカーは最高の車を作ると思っています。最高のデザインですね。最初にアメリカのスチュードベーカーを所有したのが17歳の時です。そして、手を加えたり、修復したりしました。今、博物館の展示物という形で皆さんに見てもらっています。」

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これだけ多くのチョイスがあって、彼が自分の好きな車を選ぶことができるのかと思いませんか。ジャギはこの疑問に瞬き一つしないで答えました。即答です。

「私の好きな車は」と、彼は口を開きました。「2台あります。 メルセデス300 SLととても珍しいファセル・ヴェガ2です。182台しか生産されていません。1964年には、世界最速の車でした。メルセデス 300 SLには、2種類のバージョンがあります。ガルウィングとオープンカーです。どちらも持っています。1台は家にあります。」

ジャギは約50台の車を所有しています。他のコレクションとしては、1950年式パナール・ディナX-86、1932年式パッカード・ビクトリア・グレーバー・カブリオレット、1951年式スチュードベーカー・チャンピオン、そして1950年式シトロエン15シックスがあります。

しかし、いくら質問が車のことであっても、彼はガスポンプの話に会話を戻してしまいます。

「デザインが本当に好きなんです。」と、遥かインディアナからやってきたポリーのガスポンプのことについて、彼は話します。「デザインがいいんです。70年代以降、ポンプは全て同じような感じです。古いガスポンプは素敵なんです。」